Designer's Voice

北野文朗

都市型狭小アパートAVAND(アヴァンド)
の設計思想とは?

シノケンの都市型狭小アパートAVANDの企画・設計を行うアパート事業本部 チーフデザイナー北野文朗から、AVANDに込めた想いを聞きました。

AVANDの企画・設計の始まりは約9年前からです。当初のコンセプトはズバリ「狭い部屋で快適に暮らせるか?」でした。今は「狭小アパート」というライフスタイルで多くの若い世代から支持を得ていますが、企画当初は、社内から「お風呂が必要では?」「狭すぎて暮らしづらいのでは?」と心配されました。オーナー様からも「入居は埋まるの?」と意見が出ていたのは事実です。

ただ、企画を進めていくにあたって、若者のライフスタイルの変化から「住居の設備は最低限でよい」という声も聞いたりして、だんだんとコンセプトが確信に変わってきました。特に都心のアパートなので、家にいる時間帯とその過ごし方…例えば、バルコニーに洗濯物を干すのか? 昼間に外出している間、室内干しするか?など、実際に東京に住む若者の気持ちを想像して企画・設計を進めていきました。

いまやAVANDの特徴の一つであるロフト階段と一体になった収納家具も、導入当初は「ただでさえ狭い部屋に邪魔になるのでは?」という意見もありましたが、結果、階段状の収納家具があることで「ここに住みたい!」と入居を決める方も多いと聞いています。個人的な設計の実体験からもそうなのですが、住む人の嗜好やこだわりと設計する人の提案デザインとのバランスが必要だと思っています。新しいライフスタイルを提案しつつも、個性的なデザインにし過ぎないことですね。そういう意味では、常に入居者様の意見に耳を傾け、カタチにすることが重要だと考えています。

AVAND内装

2つのフロアを持つAVANDは天井も高く開放的

ライフスタイルの変化として、一番顕著なのが、ひとり暮らしとテレビの関係性ですね。いまや若者がテレビを自宅に置かないのも当たり前のようです。そうなると設計のときにテレビ台の位置を考える必要がないので、部屋の間口幅の考え方が変わってくる。つまり “入居者様が暮らしで何を重要視しているか?”を考えると空間の在り方も変わってきます。昨今は、「自分自身で工夫し、DIYコーディネートする入居者様」、逆に「コーディネートされた部屋を選ぶ入居者様」など、ニーズが多様化しています。

AVANDの特徴は、一棟ごとに画一的な間取りの集合住宅でなく、それぞれ特徴を持った間取りを採用している点です。 玄関からのアプローチの違い、天井のデザインの違い、収納の形の違いなど、入居者様が「ここだ!」と思えるようさまざまな間取りとしています。建物の外観も周囲の環境を踏まえつつ、1棟1棟同じデザインにならないよう気をつけています。

AVAND外観

AVANDの個性豊かな外観。さまざな表情をみることができる。

現在、入居者様の多様なニーズに応えるため、新しい生活様式にも対応した都市型狭小アパート商品ORIGINO(オリジノ)も開発しました。これをAVANDと組み合わせることで、スタイルの違った部屋が混在する1棟のアパートとなります。同一でない建物を多く建てることは、生産性を考えると効率が悪いかもしれません。しかし建てる側の視点ではなく、入居者様目線で考えれば当然の方向性だと思います。これは大手デベロッパーではなかなか取りづらい商品戦略だと思います。設計は大変ですけどね。。。笑)

ライフスタイルの多様化や選択肢の多様性を望まれているワンルームアパートの市場で、入居者様とオーナー様にとってシノケンのベストな提案をし続けることが、結果、両者からの評価につながると確信しています。今後の動向にもご期待ください。

Profile

シノケンプロデュース アパート事業本部 チーフデザイナー 
一級建築士 北野文朗(Fumio Kitano)

大学卒業後、世界的建築家・高松伸氏の高松伸建築設計事務所に入所、オフィスビル・マンションの設計・監理を担当。同所で海外オフィスにも勤務し、グローバルに建築デザインに携わる。退所後、帰国し住宅設計・店舗設計・リノベーション等、多種のデザイン経験を経てシノケンへ入社。シノケンでは建築デザイン全般を統括。